野沢裕
「→□←」

2024年に発行された野沢裕のアーティストブック、『→□←』にまつわる展覧会が開催されます。


★ 野沢裕『→□←』
会期:2025年3月8日(土) – 4月5日(土) 13:00-18:00 日曜休
会場:東塔堂 | Totodo >>
住所:東京都渋谷区鶯谷町5-7 第2ヴィラ青山1F

本書は発行より遡って10年前、スペインのマドリードにあるIED(ヨーロッパ・デザイン学院)に在学していた時に作家が制作した同名書籍『→□←』(2014)に端を発します。
街角に並ぶ窓、郊外の石塊、階段を横切る影、空をいく鳥たちの群れーー制作の覚書のように日々撮影した写真から、野沢は知人友人の印刷屋や製本家と10部限りの書籍を制作しました。
『→□←』(2024)はそれ以降の10年の歳月の中で得られた写真を用いながら、同じ形式のもと新たな連続性をもって構成した新刊として発表されたアーティストブックです。
作家と見る者の眼差しや意識の交錯するイメージの小窓。日常に潜む情景や形象からシンクロニシティを繋ぎ合わせるかのようにそれらを構成した本書は、タイムレスなイメージの連関を生み出し、ささやかで終わりのない遊びへと読者を誘います。

巻末の冊子にはIEDで当時写真を教えていたスペインの写真家、リカルド・カセスが短い詩を寄せています。

「レモンの目を持ちたい。木の上から、土の上から見たい。…」

このテキストについて、カセスは彼の出身地であるバレンシア州アリカンテ県オリウエラ出身の詩人、ミゲル・エルナンデスの詩へのオマージュに基づいており、また写真の対象物とそれを見る目の豊かさとの関係、表現の複雑さから生じる継続的な緊張感とも関係していると述べています。
それらは野沢の入れ子状の遊戯的な取り組みや、作品の情緒的な側面についても触れた文章と読み解くことができるかもしれません。

本展は、この本の中に登場するイメージとともに野沢の作品を各地の書店で展示するものです。
また、『→□←』のイメージと野沢がカセスへ宛てた新たな撮り下ろしのスペシャルプリントの販売を行います。

*2024年10月29日、奇しくも本書の刊行日にバレンシア州を含むスペイン東部が記録的豪雨に見舞われ、歴史的な大洪水が起こりました。カセスのスタジオも水没し、彼のプリントや印刷機、そしてアートブックの蔵書も失われ、修復不可能な甚大な被害を受けました。スペシャルプリントおよび本展の売上の一部は、作家の意向でそのスタジオの復旧のために贈られます。


野沢裕『→□←』
2024年10月29日発行
22.1×18.9cm/丸背上製本/日英バイリンガル/本文96頁+冊子12頁
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野沢裕(のざわ・ゆたか)
1983年静岡県生まれ。東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業。東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。2014年IED マドリード校にてMFA(写真)取得。イメージとそれが投影される空間や境界を行き来しながら、複数の時空間と偶然性を呼び込み、主に写真や映像、インスタレーションの形式で作品を発表する。近年は絵画を用いた作品制作にも取り組んでいる。
近年の主な展覧会に、「Still Life」KAYOKOYUKI(2024/東京)、「Condo London 2024」Sadie Coles HQ(2024/ロンドン)、個展「山脈」void+(2023/東京)、「交錯するもうひとつの場」東京藝術大学大学美術館(2020/東京)、個展「L and Landscape」TMMT アートプロジェクツ(2019/東京)、個展「≠」KAYOKOYUKI(2017/東京)、個展「L」ユトレヒト(2015/ 東京)、個展「→■←」Intercambiador ACART(2014/マドリード)など。

協力:KAYOKOYUKI