守屋友樹「現れた本|印刷を漕ぐ」
Yuki Moriya “turn up the book”
2025年9月14日(日)〜12月27日(土)
会場: 照恩寺
住所: 東京都小平市美園町3-23-20
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東京・小平の照恩寺での企画、SHOUONJI BOOKSHELFにて、守屋友樹の『現れた本』を紹介します。
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写真の古典技法などを学んだのち、現在は美術家、写真家として活動する守屋友樹は、写真だけでなく映像や立体、ドローイングなど様々な要素を組み合わせ、不在や喪失をテーマにした作品を展開してきました。
作家自身が被災した阪神淡路大震災の体験からその時の写真に「写らなかったもの」が想起させる記憶について関心を持ったと言う守屋は、近年は特に各地のフィールドワークを重ね、その土地の自然と文化、あるいは現実と幻想とが交錯するような歴史や伝承、その中に潜む寓話や表象を引き込みながら、失われゆく記憶や、ないものとされた存在に光を当て、目には見えないものへの想像を促す作品を制作しています。
2015年から継続的に制作している『現れた本』と題されたアーティストブックは、守屋が個展をするたびにその展示写真や作品のイメージ、テキストを使って作られています。しかしこれは単なる展覧会の記録ではなく、展示会場で生じられた時空間とは異なる形で構築された、書籍ならではの体験的な冊子を目指しています。
「現れた(turn up)」という言葉は、隠れていたものが顕現すること、存在しながらも見えなかったものがそのボリュームを伴って出現することを指していますが、この本で現れるものは展覧会そのものではありません。
展示という作家の運動も永遠ではなく失われていくものであり、展示体験という、作品を軸に乱反射する個々の記憶もまた散り散りに砕かれて、時を経るごとに時間の水底へと沈んでしまうものです。
守屋の『現れた本』はそのような喪失を未然に見据えながら作家によって形作られた新たな作品であり、ときに展示室には展示されなかった作品や制作へ至る断片さえも織り交ぜながら、展覧会へ志向された作家の営みを包摂するこの本は、本という物理的な時空間を通して、かつて存在し、そして今ここにある作品の手触りと邂逅する第三の場所へと読者を誘っています。
本展は、作家がこれまでに制作した『現れた本』の全て、個展以外のグループ展や他者の展示を扱ったアーティストブックを含めて、全冊をまとめて展示する初めての機会となります。
本の紹介とあわせ、作家の近作や新作の音を使った作品も展示されます。ぜひお立ち寄りください。
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守屋友樹(もりや・ゆうき)
美術家、写真家。1987年北海道生まれ。京都府・東京都在住。日本大学芸術学部写真学科卒業、京都造形芸術大学(現京都芸術大学)大学院修了。写真の古典技法や古写真に関する歴史を学び、かつてあった景色や物、出来事などに対する眼差しやそれらを想起する手立てに関心を持ち、不在や喪失をテーマに制作を行う。
主な展覧会に、「日やけのあとの」BnA Alter Museum(京都、2025年)、「第41回東川町国際写真フェスティバル」東川町文化ギャラリー(北海道、2025年)、「潮騒の部屋」五条半兵衛麩 ホールKeiryu(京都、2024年)、「すべ と しるべ 2022 #01『蛇が歩く音』」Gallery PARC(京都、2022年)、「影を刺す光-三嶽伊紗+守屋友樹」京都芸術センター(京都、2020年)、「きりとりめでると未然の墓標(あるいはねこ動画の時代)2019-2020」パープルームギャラリー(神奈川、2019年~2020年)など。
主な受賞歴に、第41回「写真の町東川賞」特別作家賞(2025年)、第21回写真「1_WALL」奨励賞 増田玲選(2019年)、第14回写真「1_WALL」奨励賞 鷹野隆大選(2016年)。