水上愛美、若林菜穂
「静かの海」

2023年11月25日(土)ー12月17日(日)
12:00-18:00 月火水休
会場:駒込倉庫
住所:東京都豊島区駒込2-14−2





















撮影:西山功一


人類の心とイメージの歴史、政治や技術の進歩を月との関係によって対象化し、それぞれのアプローチによる絵画を提示する、水上愛美と若林菜穂による新作企画展。展示タイトル「静かの海」は月面に存在する、玄武岩の平原に由来する。
水上愛美と若林菜穂は90 年代前半に生まれた作家であり、ともに視覚的・心的に認識される堆積されたイメージについて、独自の手法と態度を持つペインターとして知られている。古今東西の神話や逸話、伝承を積層させ、見通すことが不可能でも物質的に現前する、次元を増幅させた絵画を制作する水上愛美。写真や印刷物を下絵に用いながら普遍的無意識や集合的自我に繋げるように、主観的な記憶を共有可能で多義的で記号化されきらないイメージへと油彩画を通して変換させる若林菜穂。
彼らの試みは現象学的絵画を再考、拡張するものとしても捉えられる。
月面着陸を果たしたことで、月は幻の場所ではなくなった。同様に技術の発達と歴史の発展により、人間の心も神々と繋がるホメロスの時代から遠く離れ、限界がありながらも世界の表層を受容する機能主義的な心へと変化し、今やその心のシステムは人から切り離された独自のプログラムへと移り変わろうとしている。
その中で、現在の絵画はどのような世界と結びつくのか。
地球の衛星であり、太陽の光を反射し、近くて遠い何かを映し出すレンズでもある月は、古代から幻を生み出す絵画平面であった。本展はそのレンズのあちらとこちらの物語を、それぞれの作家の生み出すイメージによって問いかける。

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本展覧会では、複数のトークイベントを開催いたします。

◆12月10日(日)18:00-19:30「心をたどる、描くこと」
登壇者:下西風澄、水上愛美、若林菜穂
3000年前の古代ギリシアから現代までの哲学を中心に、認知科学やAI、文学などさまざまな側面から、人類が生み出してきた「心」という存在を紐解く、『生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる』を上梓した下西風澄氏を迎え、人類の心と表象について出展作家二人の作品を紐解きながらお話を伺います。

◆12月17日(日)18:00-19:30「シグナルと制作」
登壇者:榎本耕一、富田正宣、本山ゆかり、水上愛美、若林菜穂
絵画のなかで描かれる記号性や物語、絵画と世界との関係をそれぞれの領域で追求する作家3名を招いてクロストークをおこないます。


企画:若林菜穂、水上愛美、見目はる香(oar press)
宣伝美術:加瀬透
什器制作:榎本留衣
協力:駒込倉庫、4649